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2015 YZF-R1

YZF-R1

YZF-R1は、スーパースポーツと呼ばれる、サーキットやレースで使われるタイプの「速い」バイクです。その「速い」はスピードだけでなく、コーナリング(旋回)を含めて、トラックを速く(短い時間で)走る能力を持つことを意味します。そのため、強力なパワー、軽量でコンパクトな車体を持ち、「速く走るために生まれてきた」バイクとなります。

実際に一般ユーザーがサーキットに持ち込んで趣味で走るというだけでなく、例えばSBKという世界選手権において競うためにも使用され、そこで性能が評価されることになります。もちろん、レースでの成績は販売にも結びつきます(今の日本ではそうでもありませんが)。

YZF-R1は1998年、1000ccでありながらコンパクト、軽量な車体で軽快に走れることで衝撃を与えたエポックメイキングなバイクです。これほどまでにスポーツできる、速く走るために割り切った高性能なバイクはなかったのです。当時はまだ1000ccのバイクでレースをする環境がなかったため、趣味としてのスポーツのバイクでした。そのR1はレースにつながる2004年に、172kg/172psという、パワーウェイトレシオ1.0へと進化しました。ただし、この172kgは油脂類の含めない「乾燥重量」であり、実際の重量はこれよりもだいぶ重く、この後にそれらを含めた装備重量で表記することとなったため、カタログ上のパワーウェイトレシオ1.0はこのモデル限りとなりました。パワーウェイトレシオ1.0というのは、ひとつの夢でありあこがれであり「SUGEEEEEEEEEE」なのです。

2009年、YZF-R1はクロスプレーンクランクを採用しました。通常、R1などが採用する並列4気筒エンジンは4つのシリンダーが等間隔に燃焼します。つまり、力は一定のリズムで発生します。エンジン自体はスムーズですが、これほど軽量かつパワーがあるとタイヤが空転してしまうことは多く、そうなった場合にグリップ(摩擦)を回復するのが難しくなります。クロスプレーンクランクはそれを不等間隔としてグリップ性能を向上させると同時に、燃焼によってピストンが押し下げられる力を回転にスムーズにつなげることができ、少ない力でクランク(棒状のものです)を回転させることができる、それによってエンジンはよりダイレクトに反応するようになり、スムーズに回る、という特徴があります。これは、プロトタイプバイクで競われる「バイクのF1」MotoGPで採用されているテクノロジーですが、当時R1が世界で初めて市販車に持ち込んだものです。

そして、来年モデルとして発表された新型YZF-R1は、今までにない大きな進化と変化をもたらしました。

まずは こちらから写真をご確認ください

外観

これまで猛禽類をイメージしたという、美しいフォルムを持っていたR1ですが、随分といかつくなりました。YAMAHAのバイクといえば美しいものなのに、最近はずいぶんいかつくなっています。

ライトが非常に細いLEDポジションと、左右に振り分けられてフロント下にあるLEDヘッドライトとなり、「ヘッドライトがどこにあるのかわからない」デザインになりました。ヘッドライトを隠すのは最近のスーパースポーツのトレンドのようですが、ヘッドライトに目をやらければ、MotoGPレーサーYZR-M1と非常によく似ています。

なお、このヘッドライトは暗くないのか?という質問がありました。LEDヘッドライトはバイクとしては新しい装備で、2014年にどどっと増えました。Z1000が小さなLEDプロジェクターを使っていますが、照射範囲がそれなりにあって、明るさも普通のヘッドライトよりいいくらいでしたから、それほど問題はないと思います。ただし、夜道を安心して走れる、というようなものかというとちょっと疑問。とはいえ、全般的にカウルのないバイクはそんなに明るいわけではないので、それと比べれば配光も良いのかもしれません。

R1は2004年からシート下にマフラーを出すセンターアップマフラーを採用してきたものの、ついにダウンマフラーへと変更になりました。管長を稼ぐことができ、空気抵抗が減少する、ということだったのですが、結局重量増と、重量物が分散することによるデメリットが目立ち、軽量化と重量物の集中のためにエンジン付近にマフラーを持ってくるショートタイプが主流となりました。R1はずっとセンターアップ2本出しでがんばっていましたが、今回「ややショート」になりました。

また、注目すべきは「閉じられていないシートカウル」です。普通、ピリオンシート(後ろ)の周りは閉じられているものです。しかし、新R1はブリッジ形状で、後ろから前が透けています。おそらくはダウンフォース(空気を使って地面におしつける力)を利用する意図で、ちゃんと強度もあるのでしょうが、なんか怖いデザインですね。

ちなみに、タンクが最近は樹脂製が多いのですが、アルミ製だそうです。マグネット式のタンクバッグが使えるので結構便利です。

エンジン、重量

エンジンは200psのクロスプレーンクランク並列4気筒です。「200ps」というのは、大台でひとつの目標であり、憧れです。より大型の「最高速系バイク」を別として、このようなSSモデルで200psを出しているのは、Kawasaki ZX-10R, DUCATI 1199 Panigale SUPER LEGGERA, MV AGUSTA F4RRです。ただし、ZX-10Rは吸気加圧であるラムエアという機構によるブースト込みの「足した」200psですし、スーパーレッジェーラは500万円以上する超スペシャルモデル、F4RRも一台一台職人が手でエンジン部品を(紙やすりで)磨くモデルで305万円、エンジンはどれだけもつかわからないレーシングエンジンです。「ラムエアなしの素で」「日常使用しても耐久性に問題のないエンジンで」200psを謳うのは一番乗りでしょう。

そして、2004年にパワーウェイトレシオ1.0一番乗りをしたR1ですが(2004年モデルではCBR1000RR, ZX-10Rも達成していましたが、発表は一番でした)、今回車両重量が199kgとなっています。車両重量でパワーウェイトレシオ1.0を切った一般市販バイクはおそらく初めてです(F4RRは190kgですが、curb weightにはなっていなかったと思います)。

ちなみに、現行モデルは逆輸入車(海外仕様)でも206kgとなっています。出力は公表していませんが、182psとなっていたはずです。これは、KAWASAKI ZX-10R(200ps)(ラムエア込み), SUZUKi GSX-R1000(185ps)と比べても低い値で、実測においてもこの2台に劣ります(パワー、重量は実測においてはカタログと大きく異なるため、相対的な関係も異なってくるのが一般的です)。

つまり、大幅なパワーアップと軽量化を果たし、「とても速くなり、レースでの戦闘力を増した」と言えます。近年、走行性能においてはドイツのBMW、イタリアのApriliaが優勢で、バイクの世界を席巻してきた日本車は劣勢でした。しかし、新型R1はそれを一気に逆転するだけのパフォーマンスを感じさせます。また、R1は初代は性能面でも圧倒的なアドバンテージを持っていましたが、特に2001年以降は動力性能においてはむしろ劣り、その分旋回性の良さでカバーする、というキャラクターでした。しかし、2015年モデルは動力性能においてもトップへと踊り出ようというのでしょう。

足回り

サスペンションは走行においてとても重要な役割を果たします。もちろん、ブレーキは最重要部品であることは間違いありません。

これまで内製だった(と思われる)フロントフォーク、リヤショックアブソーバーは日本のKYB製になりました。元々悪いわけではなかったものの、日本のSHOWAがBPFというフォークを登場させて以降、バイク用サスペンションの最高峰であり高級メーカーのスウェーデンのオーリンズにも負けないフィーリングだと評判になり、現在は他の日本3メーカー(HONDA, SUZUKI, KAWASAKI)が採用しており、この素晴らしさには完全に見劣りする状況でした。

KYBはSHOWAよりもさらに安価なバイクに採用されることが多く、性能面ではSHOWAに劣る印象があります。しかしながら、日本最高峰のJSB1000レースで今年2014年を含む3連覇を果たしたYZF-R1にはKYBのレーシングフォークが取り付けられています。KYBの高性能ロードフォークというのは随分と見ていなかった気がしますが、どうやらBPF類似の構造(オーリンズのレーシングサスペンションも同様)のものに変更されたようです。サスペンションユニットの改良は私としては望んできたものなので、これは喜ばしいところ。最新型のレーシングフォークは評判も上々です。

また、ブレーキは関連会社のアドヴィックス傘下のS&Eブレーキのものを使用していました。別に「ダメ」というわけではないのですが、近年ブレーキキャリパーの進化も著しく、最高峰である高級メーカー、イタリアのBremboに限らず、日本のNISSIN, Tokicoも非常に高性能になっています。登場時は「信頼できる高性能ブレーキ」だった住友ブレーキも、今では「いまいち」「最高ではない」になってしまいました。私のバイクもかつてはR1にもつかわれていた住友ブレーキですが、そのフィーリングは最高ではなく、「まぁ、これならOKかな」というレベルでしかありません。最近のNISSINは「すごくいい!」です。

今回、R1はブレーキをNISSINに変更しました。キャリパーは見慣れない形状ですから、新型でしょう。となれば旧来型よりも優れた性能が期待できますので、「すごくいい!」はずです。

さらに、ホイールは走行性能に大きな影響を与えますが、新型R1はマグネシウム製ホイールを採用しています。マグネシウムはアルミよりも比重が軽く、伸び率は低いため、高い剛性(曲がりにくさ)を確保しながらより軽量にすることができます。しかし、マグネシウムはアルミよりもずっと希少(そもそもアルミは地球上に最も多い金属)である上に、加工が極めて難しいため、マグネシウム製品は非常に高価です。そのため、高級な改造部品として羨望の対象となっているアイテムでもあり、マグネシウム製ホイールを標準装備するのは、高級外車の上級モデル、と相場が決まっていました。それが、R1はマグネシウム製ホイールが標準であるというのです。

なお、マグネシウム製ホイールは取り扱いが神経質なため、市販車に装備されているものは安全性からアルミ含有の割合の多いマグネシウム合金であるのが一般的で、リプレイスホイールとして市販されているもののほうが軽量で高性能です(ただし、扱いは難しい)。

インストゥルメント

平たく言えばメーターのことです。

バイクはスペースが限られている上に、通常姿勢で自然と目に入るようにはなっていないため、いかに情報をいれるかということはとても重要です。

私は視認性から言ってアナログ指針タコメーター+デジタルスピードメーターが好きですが、世の中的にはデジタルメーターの流れのようで、軽量・コンパクトにでき、コストダウンにもつながるので増えています。

しかし、多くのLCDはドット式ですらなく、決まったところが黒く反転する、電卓や時計のような液晶です(私のバイクもそうです)。ドット集合で自由に書けるメーターもあるにはありますが、数が少なく、そもそもモノクロLCDはコントラストが低い上に表示部が光ではないため、一瞬で読み取るのは難しく視認性に劣ります。ZX-10RはタコメーターはLED式で回転上昇に従って点灯していく方式となっています。もちろん細かい表示はできません(250rpm刻み)が、これはそれなりにみやすくなっています。

しかし、機能においてはやはり自由に描画できるフルカラードットLCDであるべきで、コントラストが上がれば視認性も向上します。しかし、フルカラーLCDのインストゥルメントを採用するのは、1199Panigale(221万円)と、超大型の旅バイクであるR1200RTのみです。そのような装備面でも日本車は値段の差もあって遅れをとってきましたが、R1はその領域においても負ける気はないということなのでしょう。

なんとGやブレーキ圧も表示可能といいます。

個人的には「どうせ液晶にするなら」と待望してきた装備です。

電子制御

軽量、ハイパワーであることは速さに直結しますが、そのぶん扱いの難しさも出てきます。例えば、前輪が浮き上がり、そのまま後ろに転がってしまう危険だってありますし、旋回中に不用意にスロットルをあければ強大なパワーがタイヤを空転させ、瞬く間に転んでしまうことでしょう。

そのようなモンスターパワーを制御して走ることを可能にし、またその状況で最大の性能を発揮させるのが電子制御です。

安全装備としてのABSはよく知られていますが、SSに使えるほどの性能のものはあまりなく、まだ一般的ではありませんでした。新型R1はABSも搭載します。

電子制御の核はタイヤの空転を感知し、出力を制御するTCSですが、R1は2013年に小改良に単純なTCSを追加しました。新型は極めて高度な、おそらく世界で最高のレベルにあるApriliaのARPCにも負けない制御を行うものを投入しました。さらに、滑っている状態をコントロールするスライドコントロールに加え、かなり難しく、かつ勝負に大きく響くレーシングスタートを機械任せにすることができるローンチコントロール、シフトアップ時にクラッチ操作が不要となるクイックシフトを搭載。これはAPRCのオプション付きフル装備、BMW HP4のフルオプション、MV AGUSTAのEASと同等の内容です。

電子制御は日本車が劣ってきた分野ですが、ここでも世界最高峰へと一気に出てきました。

さらに、GPSロガーを用いて走行を記録し、詳細に分析することができるデータロガーにも対応します(R1はオプション、R1Mは標準)。データロガーを持つ車両というと、1199パニガーレS(272万円)以上のパニガーレと、HP4のオプションくらいしか思いつかないのです。

電子制御サスペンション、カーボンフェアリング

今回、YZF-R1には上級グレードYZF-R1Mを登場させました。

R1Mは電子制御サスペンション、カーボン外装、データロガー、セッティング用ユニットを装備します。

カーボン外装は、よくこかす(体はつかないけれど)私にとってはむしろいらない感じなのですが、軽量化に貢献し、なにより高級なので金持ちカスタムとしては定番です。

しかし垂涎なのが、電子制御サスペンションです。

ショックアブソーバーというのは簡単に言えば、油の入った注射器とバネです。注射器はいきなりすこっとは動かず、じわじわとしか動かないのはイメージできるでしょう。これによって大きな入力でいきなり大きく動いてしまうことを防いでいます。また、注射器の口の大きさでその抵抗が変わるのもわかるでしょうか?これが減衰力の調整です。

大きく急な入力には大きな減衰力がないと動きすぎてしまい危険です。しかし、大きな減衰力では小さな入力や緩やかな入力に対して動きが小さく快適性や走行性能が損なわれます。しかし、減衰力は変更することができるようにすることはできますが、それでも普通は走行中には変更できません。そもそも大きな入力は突然やってくるものです。どれくらいの入力がかかるか予測してそれに合わせてセッティングするわけですが、基本的には大きな入力に耐えられないのは危険なので、減衰力は高めますが、そうすると動きは渋くなり、快適性もそこなわれ、走行フィーリングも悪化しますし、もちろん走行条件への適応性も問題になります。

良いサスペンションは適応できる範囲が広く、ひとつのセッティングで様々な条件に対応します。また、適応可能な最大と最小の値も広がります。その適応範囲の広さこそが「高級サスペンションだな!」という部分なのですが、電子制御サスペンションはその減衰力を状況に応じて自動的に瞬時に変化させます。つまり、電子制御サスペンションはそのユニットがもっている「最大」と「最小」の間すべてを「適応範囲」にすることができるのです。これは、電子制御でなければできない、圧倒的な性能です。

参考までに、同様に電子制御サスペンションとカーボン外装をもっているバリエーションのあるバイクとしてBMW S1000RRとHP4があります。そして、S1000RRは189万円、HP4は280万円です。しかも、これはどちらもSHOWA製サスペンションですが、R1がKYBサスペンションなのに対し、R1Mは高級・高性能サスペンションである&Oiml;HLINSを採用しています。これは素晴らしい性能が期待できるでしょう。しかし、R1Mはデータロガーにセッティングツールという、Panigale S(50万円アップチャージ)と同じような上級化もしてますし、ものすごく高そう…

値段

かなり高くなるようです…$16900とのことで、まぁ、国内仕様が出れば189万円?でなければ240-260万円くらい、R1Mは300万円は超えるでしょうね。

Since: 2014-11-07 11:19:00 +0900
Last update: 2014-11-19 13:32:01 +0900
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